【固定資産の減損】共用資産の具体例と減損判定時の留意事項

固定資産の減損 会計基準の解説
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共用資産とは

共用資産とは、その共用資産単体ではキャッシュフローを生み出さないものの、複数の資産または資産グループにまたがってキャッシュフローの生成に寄与する資産を指します。

なお、減損会計においては「主要な資産」という概念がありますが、共用資産はこの主要な資産にはなり得ません。また、「のれん」も共用資産としては取り扱いません。

共用資産の具体例

共用資産の具体例として、以下のような資産が挙げられます。

  • 本社の建物
  • 福利厚生施設
  • 研究開発拠点
  • 修繕部門の資産(全社的、または資産グループに横断的なもの)
  • 運搬設備(全社的、または資産グループに横断的なもの)
  • 動力設備(全社的、または資産グループに横断的なもの)

共用資産の減損の兆候判定

固定資産の減損を検討する場合、最初のステップとして減損の兆候の有無を判定します。

前述した通り、共用資産はそれ単体ではキャッシュフローを生み出しません。

そのため、減損の兆候の検討に当たっては、共用資産を含むより大きな単位で検討を行うことが必要です。

また、共用資産自体に減損の兆候があるかどうかも検討を行います。「共用資産自体に減損の兆候がある場合」とは、例えば、その共用資産を当初の予定よりも著しく早期に処分する場合や、当初の予定や現在の用途と異なる用途へ転用する場合、遊休状態になり将来の用途が決まっていない場合、市場価格が著しく下落した場合などが該当します。

共用資産の減損の認識判定

減損の兆候がある、と判定された場合、次のステップとして減損を認識するかどうかの検討を行います。

減損の認識判定においては、まずは資産または資産グループごとに行います。

その次に、共用資産を加えたより大きな単位で検討します。

認識判定では、固定資産の帳簿価額と割引前将来キャッシュフローを比較し、帳簿価額を上回る将来キャッシュフローを獲得できると見込まれる場合は「認識なし」と判定され、帳簿価額よりも将来キャッシュフローのほうが少ないと見込まれる場合は「認識あり」と判定されます。

共用資産がある場合の認識判定においては、固定資産の帳簿価額は当該共用資産を含む価額を使用します。同様に、将来キャッシュフローには共用資産を含むより大きな単位から獲得できると見込まれる将来キャッシュフローを使用します。

共用資産の減損の測定

減損の認識判定において「認識あり」となった場合、最後に減損損失の測定を行います。

測定に当たり、固定資産の帳簿価額と回収可能価額を比較する点は通常の減損の測定プロセスと同じです。

なお、共用資産を含むより大きな単位で測定された減損損失の金額が各資産グループで測定された減損損失の金額を上回る場合、その上回った額は原則として共用資産に配分する処理を行います。

共用資産の帳簿価額を配分する方法

ここまでは、共用資産を含むより大きな単位での減損判定の方法でしたが、共用資産の帳簿価額を合理的な基準で各資産または各資産グループに配分できる場合は配分して判定を行うことも認められています。

この方法を採用する場合、以下の点に留意する必要があります。

  • 共用資産の帳簿価額を、各資産や各資産グループに配分して管理会計を行っていること(共用資産に関する費用を配分しているだけでは足りない)
  • 共用資産が各資産または資産グループの将来キャッシュフローの生成に密接に関連し、その寄与する度合いとの間に強い相関関係を持つ合理的な配賦基準があること
  • 共用資産の帳簿価額を各資産または資産グループに配分する方法を採用した場合には、次期以降の会計期間においても原則として同じ方法を採用すること(ただし、事実関係が変化した場合はその限りではない)
  • 企業内の類似の資産または資産グループにおいても、同じ方法を採用する必要があること

上記のような観点に留意する必要があるため、一般的には、共用資産を配分する方法を採用することは難しいことが多く、原則的な方法である「共用資産を含むより大きな単位での判定」を行うケースが一般的となっています。

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