配当控除の計算方法と確定申告書の書き方

個人の税務と確定申告
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配当控除とは

配当控除とは、個人の所得税を計算する際の制度のひとつで、剰余金の配当などの配当所得を受け取った際、一定の方法で計算した金額の税額控除を受けることができる制度です。この配当控除を受けるためには、確定申告を行うことが必要です。

配当控除は、法人税と所得税等の二重課税を解消するために設けられている制度です。つまり、配当は企業が獲得した剰余金を原資として支払われるものですが、その剰余金にはすでに法人税が課税されています。そのため、配当を支払う際にさらにそこから所得税等を源泉徴収してしまうと、法人税と所得税等で二重課税が生じてしまいます。これを解消するために、確定申告時に控除を認めるという趣旨で設けられている制度です。

配当控除の対象になるもの・ならないもの

いわゆる「配当」と言ってもいろいろな種類の配当があります。そのうち、所得税の確定申告を行う際に適用可能な配当控除は以下のものに限られます。

■配当控除の対象になるもの■

  • 日本国内に本店のある法人から受ける剰余金の配当、利益の配当、剰余金の分配、金銭の分配、証券投資信託の収益の分配など かつ
  • 総合課税の適用を受けた配当所得
外国法人から受ける配当等は上記の定義に当てはまりませんので、配当控除を受けることはできません。また、配当所得を総合課税で申告した場合に限られますので、分離課税で申告した場合は適用を受けることができません。

また、下記のものも配当控除の対象にはなりません。

配当控除の対象にならないもの
  • 基金利息
  • 私募公社債等運用投資信託等の収益の分配に係る配当等
  • 国外私募公社債等運用投資信託等の配当等
  • 外国株価指数連動型特定株式投資信託の収益の分配に係る配当等
  • 特定外貨建等証券投資信託の収益の分配に係る配当等
  • 適格機関投資家私募による投資信託から支払を受けるべき配当等
  • 特定目的信託から支払を受けるべき配当等
  • 特定目的会社から支払を受けるべき配当等
  • 投資法人から支払を受けるべき配当等
  • 確定申告不要制度を選択したもの
  • 申告分離課税制度を選択したもの
J–REITの分配金も配当控除の対象外です。

配当控除の金額の計算方法

配当控除の金額は、「配当所得×控除割合(%)」で計算します。控除割合は課税総所得金額に応じて変動し、その割合の境目は1,000万円です。

なお、配当所得とは以下の計算式で算出される金額です。

配当所得=収入金額(源泉徴収前)-株式取得のために要した負債の利子
また、ここで言う課税総所得金額とは、課税総所得金額、土地等に係る課税事業所得等の金額(平成10年1月1日から令和5年3月31日までの間は適用なし)、課税長期(短期)譲渡所得の金額、上場株式等に係る課税配当所得の金額、株式等に係る課税譲渡所得等の金額および先物取引に係る課税雑所得等の金額の合計額を指します。
控除割合(%)については次の通りです。

課税総所得1,000万円以下の場合

所得税 住民税
課税総所得1,000万円以下 10% ※1 2.8% ※1

※1 証券投資信託の収益の分配金に係る配当所得は半分(所得税5%、住民税1.4%)。外貨建等証券投資信託はさらにその半分。

課税総所得1,000万円超の場合

所得税 住民税
課税総所得1,000万円以下の部分 10% ※2 2.8% ※2
課税総所得1,000万円超の部分 5% ※3 1.4% ※3

※2 証券投資信託の収益の分配金に係る配当所得は半分(所得税5%、住民税1.4%)。外貨建等証券投資信託はさらにその半分。
※3 証券投資信託の収益の分配金に係る配当所得は半分(所得税2.5%、住民税0.7%)。外貨建等証券投資信託はさらにその半分。

■具体例■

課税総所得金額が1,000万円超の場合の具体的な計算例を示すと、以下のようになります(所得税の例)。

▼計算の前提

  • 課税総所得金額 1,300万円(内訳:配当所得500万円、その他の所得800万円)
  • 国内の会社からの剰余金の配当である

▼配当控除の金額

  1. 課税総所得1,000万円超の部分に係る配当は「300万円」
  2. この部分について控除割合は5%であるため、配当控除の金額は15万円(300万円×5%)
  3. 課税総所得1,000万円以下の部分に係る配当は「200万円」
  4. この部分について控除割合は10%であるため、配当控除の金額は20万円(200万円×10%)
  5. 配当控除の金額の合計は、b(15万円)とd(20万円)の合計の35万円

配当控除を受ける場合の確定申告書の書き方

確定申告において配当控除の適用を受ける場合、確定申告書の第1表と第2表の書き方は次のようになります。

記載する箇所 記載する金額
第1表 「収入金額等」の「配当」 源泉徴収前の配当収入の額
「所得金額等」の「配当」 借入金の利子があれば配当収入からその額を控除した金額(なければ配当収入と同額)
「税金の計算」の「配当控除」 配当所得×控除割合(%)で計算した額
「税金の計算」の「源泉徴収税額」 配当を受け取った際に源泉徴収された金額を含める
第2表 「所得の内訳」 配当金支払者の社名、配当収入の額、源泉徴収された金額等

確定申告書への書き方のポイントは、

  • 配当収入の額や源泉徴収税額は、配当金の支払者等から通知されるため、そこから転記する
  • 配当の元となる元本を借入によって取得した場合でない限り、配当収入と配当所得は同額になる
  • 源泉徴収税額は配当に関するもの以外にもあることが多い(給与や事業所得などで源泉徴収されている場合が多い)ため、それらに係る源泉徴収税額に配当分の源泉徴収税額を加えることを忘れない

といった点が挙げられます。

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