インボイス制度においては、適格請求書発行事業者は相手方からの求めに応じインボイスを交付する義務があります。
しかし、例外として、インボイスの交付が困難な取引に限り、インボイスの交付義務が免除されています。この記事では、その例外取引のうち「自動販売機特例」についてまとめています。
自動販売機特例とは
自動販売機特例とは、3万円未満の自動販売機及び自動サービス機により行われる商品の販売等については、インボイスの交付を免除する、というものです。
具体例
次のような取引が自動販売機特例の対象になります。
▼自動販売機特例の対象になるもの▼
- 自動販売機による飲食料品の販売
- コインロッカー
- コインランドリー
- 金融機関のATMや両替機を利用した場合の手数料
いずれも「機械装置のみにより代金の受領と資産の譲渡等が完結する」という点がポイントです。つまり、機械装置のみにより代金の受領が行われているだけではダメで、それに加えて機械装置のみにより資産の譲渡等が完結する、という要件を満たしていなければなりません。
自動販売機特例に該当しないもの
「自動販売機特例に該当するのでは?」と思われるものでも実際には該当しないものとして注意すべき取引があります。具体的には以下の取引が挙げられます。
▼自動販売機特例の対象にならないもの▼
- スーパーやコンビニなどのセルフレジ
- コインパーキング
- 自動券売機
- インターネットバンキングを利用した場合の手数料
自動販売機特例に該当しない理由
これらの取引が自動販売機特例に該当しない理由は、「機械装置のみにより代金の受領と資産の譲渡等が完結しているか」という点に照らして考えると整理できます。
つまり、スーパーやコンビニなどのセルフレジは確かに機械で代金の受領が行われていますが、それは単にお会計の精算をしているだけであり、資産の譲渡が機械装置を使って実施されているわけではありません。
また、コインパーキングの場合は、駐車場に設置された機械で代金の受領と駐車券の発行などが行われているものの、資産の譲渡等についてはその機械を通じて行われているわけではありません。自動券売機も同様です。
インターネットバンキングについても機械装置で資産の譲渡等が行われているとは言えません。
自動販売機特例で仕入税額控除する方法
ここまではインボイスの発行側における免除規程についてまとめましたが、インボイスの受領側においても仕入税額控除の要件を確認しておく必要があります。
インボイス制度下においては、原則として適格請求書(インボイス)の保存がないと仕入税額控除を行うことができません(ただし様々な例外はあります)。
自動販売機特例においては、インボイス発行側の交付義務が免除されていることから、仕入側の事業者においては仕入税額控除の要件として「帳簿への記載」のみが要件とされています。
帳簿へ記載を追加する内容
帳簿への記載のみで仕入税額控除を受けるためには、通常必要な記載事項に加えて、下表の内容を追加で記載する必要があります。
No. | 追加で記載が必要となる内容 |
1 | 帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められる仕入れに該当する旨
➡具体的には「3万円未満の自動販売機特例」などと書く。 |
2 | 仕入れの相手方の住所又は所在地
➡具体的には「XX市の自動販売機」「XX銀行XX支店のATM」のように書く。 |
これらの記載を帳簿に追加しなければ仕入税額控除が認められないこととされています。非常に煩雑であり、事務処理の増大を招く制度となっています。
参考:金融機関の手数料についての整理
多くの企業で日常的に発生する金融機関での振込手数料については、ATMで振込を行った場合には自動販売機特例が使えますが、窓口での振込やインターネットバンキングではこの特例は使えません。したがって、特例が使えない以上、原則通りインボイスの保存がないと仕入税額控除が認められないことになります。振込手数料以外にも、IB取扱手数料、口座振替手数料、残高証明書発行手数料等も同様にインボイスが必要になります。
自動販売機特例のまとめ
自動販売機特例は、自動販売機等により行われる3万円未満の取引についてインボイスの交付を免除する制度です。ただし、この特例の対象となるのは「機械装置のみにより代金の受領と資産の譲渡等が完結する」場合のみです。
自動販売機特例の対象となる取引の範囲をしっかり把握しておくことと、仕入税額控除の要件として帳簿に追加して記載しなければならない事項を漏れなく記載することがポイントです。