【インボイス】適格請求書発行事業者の登録申請書の書き方と注意点

インボイス 個人の税務と確定申告

インボイス制度は令和5年10月1日から開始されます。

インボイスを発行するためには、税務署に対して登録手続きを行わなければなりません。具体的には、納税地の所轄税務署長に「適格請求書発行事業者の登録申請書」を提出し、税務署から通知を受領する必要があります。

この記事では、「適格請求書発行事業者の登録申請書」の書き方に関して注意すべきポイントを中心に記載しています。

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登録申請の期限

令和5年10月1日から適格請求書発行事業者になろうとする場合、登録申請書の提出期限は、原則として令和5年3月31日です(ただし、特定期間の課税売上高で判定する場合は6月30日まで)。

なお、提出に当たり困難な事情がある場合は令和5年9月30日までに提出することも認められています。困難な事情については「困難の度合いは問わない」とされているため、理由は何でもよいと解釈されています。申請書の1枚目に困難な事情を書く欄があります。新規設立のため、申告納税の負担との検討に時間を要した、などと記載することで足りると思われます。

ちなみに、新設法人の場合は、設立年度の期末までに登録申請書を提出すれば期首にさかのぼって効力が生じる取扱いとされています。

登録申請書の書き方(初葉)

ここから、登録申請書の具体的な書き方と注意点についてまとめていきます。

申請用紙について、国内の事業者は第1-(1)号様式を使用します。国外事業者用の様式も用意されていますが、こちらは主に非居住者が対象です。

申請用紙は2枚で1組となっています(初葉と次葉)。

申請者

登録申請書の1枚目(初葉)の上段には「申請者」の各種情報を記載する欄があります。

  • 住所又は居所(法人の場合は本店等の登記情報)
  • 納税地
  • 氏名(法人の場合には会社名)
  • 法人の代表者氏名(個人事業主は記載不要)
  • 法人番号

上記の事項を記載します。

なお、個人事業主の中には本名ではなくいわゆる屋号で活動している場合もありますが、氏名欄に屋号を記載してはいけません。また、姓と名の間は1マス開けます。

法人の場合、記載に当たっては「国税庁法人番号公表サイト」で自社の情報を検索し、ここに掲載されている情報を確認しながら記載するのがよいでしょう。

Link: 法人番号公表サイト

事業者区分

「事業者区分」という箇所は、課税事業者か免税事業者のどちらかにチェックマークを付すようになっています。

課税事業者とは消費税を納付する義務がある事業者で、免税事業者とはその義務のない事業者のことを指します。

課税事業者か免税事業者のどちらにチェックマークを付すかについては、この登録申請書を提出するタイミングにおいてどちらに該当しているか、で判定します。

つまり、この登録申請書を提出することで今後課税事業者になることが見込まれる場合であっても、提出時点において消費税の納税義務がない場合には、免税事業者にチェックマークを付すことになります。

困難な事情

事業者区分の下に、「令和5年3月31日までにこの申請書を提出することができなかったことにつき困難な事情がある場合には、その困難な事情」を記載する箇所があります。

前述した登録申請書の提出期限に間に合わない場合に記載する欄ですので、原則的な申請期限までに提出が間に合う場合には空欄で構いません。もし、提出期限に間に合わなかった場合には、その理由をここに記載します。例えば、「新規設立のため」や「申告納税の負担との検討に時間を要した」などと記載することになると考えられます。

特に、これまで免税事業者であった場合には、この申請書を提出することで消費税の納税義務が生じることになり、確定申告の際に追加の作業と納税の負担が発生します。例えば、これまで所得税の確定申告書しか提出していなかったフリーランスの事業者などは、インボイス制度の登録申請書を提出することで、追加で消費税の確定申告書も作成しなければならなくなり、これに伴い追加の税金も納めなければならなくなります。そのため、今現在、免税事業者の場合には、本当に課税事業者になる必要があるのか、もしくは課税事業者にならないと取引が継続できないか、といった観点で慎重に検討することがポイントとなります。原則的な申請期限に間に合わなかったとしても、これらの検討に時間を要していたのであれば、その事情をこの欄に記載することとなります。

税理士署名

税理士がいる場合のみ必要な箇所です。

通知方法の選択

登録申請書をe-Taxで送信する場合、税務署からの通知を電子的に受領することを希望するか書面で通知を希望するか、選択することができます。

「本申請に係る通知書等について、電子情報処理組織(e-Tax)による通知を希望します。」の箇所です。

チェックマークを付すようになっていますので、電子的に通知が欲しい場合にはチェックを付します。

ここにチェックをしないと、せっかく電子的にe-Taxで申請したとしても通知書は書面でしか送られてきませんので、チェックを忘れないよう注意が必要です。

なお、申請書の提出方法は、e-Tax(電子送信)か書面(郵送)のどちらかです。書面の場合は、各国税局ごとに設置されているインボイス登録センターへ郵送します。税務署へ郵送するのではありません。また、管轄の税務署への持ち込みもできません。e-Taxの場合、きちんと提出できたかどうか分かりづらいですが、メッセージボックスに「受信通知」というお知らせが届いており、そこにエラーの表示がなければ正しく送信が完了しています。

登録申請書の書き方(次葉)

続いて登録申請書の2枚目(次葉)です。次葉は大きく、上段と下段に分かれており、上段は「免税事業者の確認」、下段は「登録要件の確認」という構成になっています。

免税事業者の確認

免税事業者の場合、上段の「免税事業者の確認」欄に必要事項を記載していきます。

登録申請書の1枚目(初葉)で免税事業者にチェックマークを付けた場合のみ記載する箇所です。1枚目(初葉)で課税事業者にチェックを付けた事業者はこの「免税事業者の確認」欄は記載を要しません。

免税事業者の確認欄の中は、さらに上段と下段に分かれており、それぞれ以下の記載があります。

上段 令和5年10月1日から令和11年9月30日までの日の属する課税期間中に登録を受け、所得税法等の一部を改正する法律(平成28年法律第15号)附則第44条第4項の規定の適用を受けようとする事業者
※登録開始日から納税義務の免除の規定の適用を受けないこととなります。
下段 消費税課税事業者(選択)届出書を提出し、納税義務の免除の規定の適用を受けないこととなる課税期間の初日から登録を受けようとする事業者

上段について

上段または下段のどちらかを選択してチェックマークを付けることになりますが、上段は経過措置の適用を受ける場合にチェックをする箇所です。

つまり、令和5年10月1日から適格請求書発行事業者の登録を受けたい場合、です。

通常、免税事業者が課税事業者になろうとする場合、「課税事業者選択届出書」を提出する必要がありますが、この取り扱いは、令和11年9月30日の属する課税期間までは「課税事業者選択届出書」を提出しなくても課税事業者になることができるというものです。この適格請求書発行事業者の登録申請書のみを提出すれば、自動的に課税事業者になることができます。

下段について

上段にチェックマークを付さない場合に限り下段に該当することになりますが、下段は、例えば令和5年1月1日から課税事業者になる場合にチェックする箇所です。例として、個人事業主の場合で令和3年の課税売上高が1,000万円を超えていたことにより令和5年から自動的に課税事業者になる、といったケースです。

登録要件の確認

登録要件の確認の箇所は、課税事業者であっても免税事業者であっても、全員が記載する部分です。

「課税事業者です。」は「はい」にチェックを付します。今現在、免税事業者であったとしても適格請求書発行事業者の登録を受ける場合には「はい」にチェックすることになり、基本的に「いいえ」にチェックが入ることはありません。

「納税管理人を定める必要のない事業者です。」の部分については、ほとんどの場合「はい」にチェックを付すことが想定されます。納税管理人を定める必要がある場合はやや特殊なケースであり、登録申請書に内容の説明が記載されています。

「消費税法に違反して罰金以上の刑に処せられたことはありません。」の部分についても、ほとんどの場合「はい」にチェックすることになりますが、仮に「いいえ」の場合には申請書の指示に従ってチェックマークを付していきます。

なお、「消費税法に違反して罰金以上の刑に処せられたこと」に、いわゆる加算税や延滞税は該当しません。過去に税務署から、過少申告に伴う加算税や税金を滞納したことによる延滞税を課されたことがあったとしても、これらは罰金には該当しないためです。「罰金以上の刑に処せられたこと」とは、起訴されて裁判により罰金以上の刑が確定したことを指しています。

以上が、適格請求書発行事業者の登録申請書の書き方と注意点です。

簡易課税を選択する場合の留意点

ここからは、適格請求書発行事業者の登録申請書ではありませんが、免税事業者が登録申請書と一緒に提出することが多いと想定される「簡易課税制度選択届出書」についての留意点です。

簡易課税は、基準期間(原則2年前)の課税売上高が5,000万円以下の場合に選択できる制度です。通常、この簡易課税制度選択届出書は、適用を受けようとする課税期間が開始する前までに提出しなければなりません(事業開始の1年目などは例外的取扱いあり)。

ただし、インボイス制度の導入に際し免税事業者が令和5年10月1日から令和11年9月30日までの日の属する課税期間中に登録を受ける場合には登録日から課税事業者になる、という経過措置が設けられており、この経過措置を受けるケースにおいて簡易課税の適用を受けたいときは、その課税期間の末日までに「簡易課税制度選択届出書」を提出すれば簡易課税の適用を受けることができます。

つまり、本来は事前提出が必要な書類であるにもかかわらず、特例的に事後提出でも認める、ということです。

<具体例>

免税事業者である個人事業主が、令和5年10月1日から適格請求書発行事業者の登録を受けた場合で、令和5年分の確定申告に際して簡易課税によって作成した申告書を提出する場合

簡易課税制度選択届出書の提出期限 ➡ 令和5年12月31日まででよい

ただし、この場合、簡易課税制度選択届出書において「消費税法施行令等の一部を改正する政令(平成30年政令第135号)附則第18条の規定により消費税法第37条第1項に規定する簡易課税制度の適用を受けたいので、届出します。」にチェックをする必要があります。

この「消費税法施行令等の一部を改正する政令(平成30年政令第135号)附則第18条の規定により消費税法第37条第1項に規定する簡易課税制度の適用を受けたいので、届出します。」にチェックマークを付さないと、翌期(上記の例では令和6年)から簡易課税が適用されることになってしまい、令和5年分の申告に際しては簡易課税を適用することができず、原則的な方法により正確な消費税計算を行わなければならなくなります。特に、フリーランスなどの小規模な事業者の場合、簡易課税を適用できないと帳簿付けの作業や納税額の計算が複雑になり時間を取られることになるだけでなく、場合によっては税金の額自体を多く納めなければならなくなることもあり、注意が必要です。

まとめ

インボイス制度は、大企業だけでなく中小企業やフリーランスなどの小規模事業者にとっても影響の大きな制度です。そして、「適格請求書発行事業者の登録申請書」につていは、記載に当たり注意すべきポイントが複数あり、記載を誤った場合には金銭的な負担を生じさせることもあり得ます。この記事では、多くの事業者に共通して注意を要すると思われるポイントを記載していますので、最終的には各事業者の実情に合わせ、国税庁のホームページなどで公開されている情報を十分に確認することが必要です。
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