【インボイス】1万円未満の少額特例のまとめ

法人経営の税務

インボイス制度には請求書等の保存に関して「少額特例」という制度があります。

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少額特例とは

インボイス制度においては、まず大原則として、仕入税額控除の要件に適格請求書(インボイス)の保存が求められています。そのため、適格請求書(インボイス)を受領できない取引については、仕入税額控除ができないというのが原則です。

少額特例は、この原則に対する特例的な取扱いとして認められているもので、一定規模以下の事業者における1万円未満の課税仕入れについては一定期間、適格請求書の保存をしなくても仕入税額控除ができるという制度です。

規模の大きくない中小・零細企業やフリーランス等にとって、仕入税額控除をするために1万円未満の少額なインボイスの保存まで求めることは大きな事務負担になるため、その負担を和らげるために設けられている軽減措置です。

一定規模以下の事業者の要件

少額特例は、すべての事業者において認められるわけではありません。この特例の対象になるのは「一定規模以下の事業者」という要件を満たす場合のみです。

一定規模以下の事業者とは次の通りです。

【少額特例の対象となる事業者の要件】

  • 基準期間における課税売上高が1億円以下の事業者

または

  • 特定期間における課税売上高が5,000万円以下の事業者
基準期間とは、個人事業者については前々年、法人については前々事業年度を指します。つまり、個人事業者の場合は2年前、法人についても基本的に2期前が該当することになります。
特定期間とは、個人事業者については前年の1月1日~6月30日までの期間、法人については前事業年度開始の日以後6ヵ月の期間を指します。
ポイント 基準期間と特定期間のいずれの期間も「過去の年度である」というのがポイントです。つまり、その年度の課税売上高がいくらであっても(どんなに多額であっても)、基準期間または特定期間の課税売上高が少額であり要件を満たしていれば対象になります。

納税義務の判定に用いる特定期間との違い

基準期間や特定期間を用いた判定は、インボイス制度の開始前から消費税の納税義務の判定を行う際に利用されている方法です。納税義務の判定を行う際には特定期間の判定を課税売上高に代えて「給与支払額」で行うことも認められています。そのため、売上が好調で特定期間の課税売上高が非常に多額であっても、ビジネスモデルとして人員をあまり多く使わない企業などではこの「給与支払額」が少額となり、消費税の納税義務が免除されるといった判定結果になることがあります。

注意 この点について、インボイス制度に関する少額特例判定においては、課税売上⾼による判定に代えて給与⽀払額の判定によることはできません

新規設立法人の場合

法人を新規に設立した場合、原則として第1期・第2期は基準期間が存在しません(2年前はまだ法人格が存在していない)ので、自動的に少額特例の対象となります。
なお、第2期は特定期間(前年である第1期の上半期)が存在しますが、特定期間における課税売上高が仮に5,000万円を超えていたとしても、少額特例の対象となります。

少額特例が適用される期間

少額特例は、永久に適用できる制度ではなく、期限が定められています。

少額特例の期間は、令和5年10月1日から令和11年9月30日までです。

1万円未満のインボイスとは

少額特例が認められるインボイスの金額基準は「1万円未満」です。

1万円未満かどうかは、1回の取引ごとの金額、かつ税込みで判断します。そのため、1商品ごとに判定することはできません。例えば、税込み1万円未満の商品をいくつか同時に購入し、その合計額が1万円以上となった場合、1取引単位では1万円以上となってしまいますので少額特例の対象とはなりません。

免税事業者からの仕入れも対象になる

少額特例は、適格請求書発行事業者からの課税仕入れに限定されているわけではありません。すなわち、免税事業者などの適格請求書発行事業者以外の者(インボイスを発行できない者)からの課税仕入れであっても対象になります。

少額特例のまとめ

この記事のポイントをまとめると次のようになります。

  • 少額特例は比較的小規模な事業者しか対象にならない(基準期間、特定期間で判定)
  • 永久に認められる制度ではない(令和11年9月30日で終了)
  • 1取引かつ税込みで1万円未満の取引のみが対象
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