事務所家賃のインボイス対応【通知書のサンプルあり】

法人経営の税務

事務所を賃借している場合、その家賃には消費税がかかっていることから、インボイス制度への対応が必要となります。

家賃については毎月請求書が送られてくることは一般的ではなく、賃貸借契約書に定められた金額を口座振替や振込によって貸主に支払っているケースが多いと思います。

この記事では、請求書が送られてこない事務所家賃について、インボイス制度下で求められる対応をまとめています。

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インボイス制度の下では家賃も適格請求書が必要

令和5年10月1日以降のインボイス制度の下では、仕入税額控除を受けるためには適格請求書の保存が要件とされています。事務所家賃などの毎月定額で支払う経費について適格請求書を保存しなくてもよいといった何らかの例外規程はありません。そのため、事務所家賃についても原則通り適格請求書が必要となります

ところが、事務所家賃については毎月請求書を受領するケースは稀です。

その場合、請求書が送られてこない家賃については仕入税額控除を受けることができないのではないか、という疑問が生じます。もしくは、仕入税額控除を受けるために、今後は貸主に依頼して毎月請求書を発行してもらわなければならないのでしょうか。

この点について、必ずしも毎月請求書を発行してもらう必要はなく、別の方法で対応をすれば仕入税額控除を受けることが可能です。そこでポイントとなるのが賃貸借契約書です。

賃貸借契約書を確認する

まず、現状の賃貸借契約書を確認します。

インボイス制度開始前から賃借している事務所の場合、賃貸借契約書にインボイスの記載事項が満たされていないことが想定されます。

インボイスの記載事項とは、下記の6項目です。

  1. 適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号
  2. 課税資産の譲渡等を行った年月日
  3. 課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容
  4. 課税資産の譲渡等の税抜価額又は税込価額を税率ごとに区分して合計した金額及び適用税率
  5. 税率ごとに区分した消費税額等
  6. 書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称

この6項目が記載されていないものはインボイスと認められません。

そこで、現状の賃貸借契約書に上記6つの項目が記載されているかを確認します。(ただしNo.2の課税資産の譲渡等を行った年月日は除く(後述)。)

特に赤でアンダーラインを付した事項については記載されていないケースが想定されます。

記載されていない事項が判明したら、次にその事項について貸主から通知してもらいます。

貸主から通知書を受領する

現状の賃貸借契約書において記載が不足している事項を貸主から通知してもうため、物件の貸主から通知書を受領します。そして、当該通知書を契約書と一緒に保存しておきます。

通知書のサンプル

貸主から受領する通知書は、現状の契約書で不足している項目だけを通知してもらえばよいため、様々な様式が考えられます。

一例としてサンプルを示すと以下のような記載が考えられます。(契約書において登録番号、税率、消費税額の3項目の記載が不足していた場合の例)

インボイス制度開始に伴う通知

令和○年○月○日

インボイス制度の開始に伴い、下記のとおり通知いたします。令和○年○月○日付締結の賃貸借契約書とあわせて本通知書の保管をお願いいたします。

通知事項

  • 登録番号  T○○・・・
  • 消費税率  10%
  • 消費税額  ○○円

貸主 ○○ ○○

注意 上記のサンプルはあくまで一例であり、実際のやり取りに当たっては法令等に従い各企業の状況に応じて調整する必要があります。

なお、通知書は文書によらなければならないといった規程はありませんので、メールなどで通知を受けることも問題ないと考えられます。

通帳や振込金受取書の保存も必要

賃貸借契約書と通知書が揃ったことで、インボイスの記載事項6項目のうちNo.2以外は要件を満たしたことになります。

No.2への対応として、口座振替によって家賃を支払っている場合には、通帳に取引日が記録されていることから、通帳をあわせて保存しておきます。また、振込によって家賃を支払っている場合は、銀行が発行する振込金受取書などを保存しておきます。通帳や振込金受取書に記録された年月日が実際に取引を行った証拠としてNo.2の要件を満たすことになるためです。

上記の対応が認められる理由は、インボイス制度において適格請求書はひとつの書類ですべての記載事項が満たされていなければならない訳ではなく、相互の関連が明確な複数の書類で記載事項がきちんと書かれていれば問題ない、とされているためです。
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