高額特定資産を取得した場合の3年縛りの解説【消費税】

法人経営の税務

消費税に関しては、納税義務の判定や制度の適用の可否に関して様々な制限が設けられています。この記事では、高額特定資産を取得した場合の3年縛りについて解説しています。

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高額特定資産を取得した場合の3年縛りとは

平成28年4月1日以後に取得した高額特定資産については、消費税の計算に関して、いわゆる「3年縛り」が適用されます。

3年縛りが適用される条件と概要は下記のとおりです。

  • 免税事業者でない年度 及び
  • 簡易課税でない年度

に高額特定資産の仕入れを行った

その仕入れを行った年度から3年間、

  • 免税事業者になれない
  • 簡易課税制度選択届出書を提出したうえで簡易課税を適用することができない

例えば、12月決算の法人(事業年度は1年、かつ本則課税)のケースで、X1年5月1日に高額特定資産の取得をした場合、その取得をした年度の初日(X1年1月1日)から3年を経過する日(X3年12月31日)の属する課税期間まで納税義務が免除されないうえ、簡易課税制度選択届出書を提出して簡易課税により申告することができません。

高額特定資産とは

高額特定資産とは、一の取引の単位につき、課税仕入れに係る支払対価の額(税抜き金額)が1,000万円以上の棚卸資産または調整対象固定資産を指します。調整対象固定資産に加えて棚卸資産についても対象に含まれている点がポイントです。

なお、調整対象固定資産とは以下のものを指します。

調整対象固定資産に該当する資産の種類の例>
建物、構築物、機械及び装置、船舶、航空機、車両及び運搬具、工具、器具及び備品、鉱業権その他の資産

簡易課税制度の適用についての留意点

高額特定資産を取得した場合の3年縛りと簡易課税制度の関係については、3年間本則課税を強制するために「簡易課税制度選択届出書」の提出を制限することで縛っている、という関係になっています。

したがって、もともと過去の年度に「簡易課税制度選択届出書」を提出していた事業者が、基準期間の課税売上高が5,000万円を超えたことに起因して自動的に本則課税となった場合、その本則課税となった年度に高額特定資産を取得したケースでは、その翌年度の基準期間の課税売上高が5,000万円以下であれば、高額特定資産を取得した翌年度から簡易課税によって申告することができることになります。

「本則課税年度に高額特定資産を取得したため、そこから3年間は常に本則課税が強制される」というのは誤りです。

調整対象固定資産に関する3年縛りとの違い

高額特定資産に関する3年縛りの制度が創設される前から、いわゆる「調整対象固定資産に関する3年縛り」の制度があります。

両者は、どちらも3年間免税事業者になれない点や、3年間簡易課税の選択ができない点で共通しています。

しかし、調整対象固定資産に関する3年縛りの制度では、対象事業者が「課税事業者を選択した事業者」「新設法人」「特定新規設立法人」の一定の場合に限定されていました。そのため、制度の抜け穴を突く形で消費税の負担を軽くしようとする行為が行われていました。この抜け穴を防ぐ目的で、高額特定資産に関する3年縛りの制度が創設されました。

規制の対象となる取得資産の金額にも両者で違いがあります。調整対象固定資産に関する3年縛りの制度では税抜100万円以上の資産が対象となるのに対し、高額特定資産に関する3年縛りの制度では税抜1,000万円以上の資産が対象になっています。

さらに、規制対象の資産の種類についても、調整対象固定資産に関する3年縛りの制度では固定資産のみでしたが、高額特定資産に関する3年縛りの制度では固定資産に加え棚卸資産も対象とされています。

調整対象固定資産 高額特定資産
税抜100万円以上 税抜1,000万円以上
固定資産のみが対象 固定資産に加え棚卸資産も対象

「高額特定資産の取得に係る課税事業者である旨の届出書」の提出が必要な場合

「高額特定資産の取得に係る課税事業者である旨の届出書」については、高額特定資産の仕入れ等を行った後、3年縛りの適用を受ける課税期間の基準期間における課税売上高が1,000万円以下となった場合に提出が必要となります。

上記以外の場合は、「高額特定資産の取得に係る課税事業者である旨の届出書」を提出する必要はありません。

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