満期保有目的の債券とは
満期保有目的の債券とは「満期まで所有する意図をもって保有する社債その他の債券」を言います。
期末に時価評価を行わないといった特徴的な会計処理が認められているため、安易に満期保有目的の債券に分類することはできず、満期保有目的の債券に分類するための要件は厳格に定められています。具体的には、「満期まで所有する積極的な意思」という主観的な要件だけでなく、「満期まで所有する能力」という外形的な要件も必要とされています。
さらに、満期日前の売却や保有目的を変更する場合にも制限がかけられています。
満期保有目的の債券にはペナルティあり
有価証券の取得時において満期保有目的の債券に分類した債券に関して、その一部を売買目的有価証券やその他有価証券に振り替えたり、償還期限前に売却した場合、満期保有目的の債券に分類している残りのすべての債券についても保有目的の変更があったものとみなされます。
そのため、残りすべての満期保有目的の債券も売買目的有価証券またはその他有価証券に振り替える必要が出てきます(※)。
また、当該年度と翌年度の2年間、新たに取得した債券を満期保有目的の債券に分類することもできません。
一種のペナルティともいえる取り扱いであるため、留意が必要です。
満期保有目的の債券を、 | ||
■売買目的有価証券やその他有価証券に振り替える | ➡ | ■残りもすべて売買目的有価証券またはその他有価証券に振り替えなければならない |
■償還期限前に売却する | ■2年間、新たに満期保有目的の債券に分類することができない |
※例外的に、当該有価証券の保有者に起因しない事象の発生等の場合は振り替えなくてよいケースもあります。
例外的にペナルティが課されないケース
満期保有目的の債券を売買目的有価証券やその他有価証券に振り替えたり償還期限前に売却した場合には、上記の通りペナルティがありますが、例外的にペナルティが課されないケースがあります。
それは、下記1~6のような状況が生じた場合または生じると合理的に見込まれる場合です。
- 債券の発行者の信用状態の著しい悪化
- 税法上の優遇措置の廃止
- 法令の改正又は規制の廃止
- 監督官庁の規制・指導
- 自己資本比率等を算定する上で使用するリスクウェイトの変更
- その他、予期できなかった売却又は保有目的の変更をせざるを得ない、保有者に起因しない事象の発生
補足:満期日まで保有したとみなされる場合
満期保有目的の債券について、売却価額が満期償還時の金額とほぼ同額となるような場合においては、満期日の到来まで保有したものとして取り扱われます。
具体的には、以下の2つの場合です。
- 債券の売却が満期日に極めて近い時点で行われている場合
- 割賦償還等により取得時の元本のうちの大部分が償還された銘柄について残りの債券を売却する場合
「満期日に極めて近い時点」とは | ➡ | 満期日までの期間が3ヵ月以内である場合 |
「元本のうちの大部分」とは | ➡ | 取得時の元本の90%以上が割賦償還等により償還されている場合 |
まとめ
満期保有目的の債券を満期日前に売却したり保有目的を変更すると、原則として、残りすべての満期保有目的の債券も売買目的有価証券またはその他有価証券に振り替えなければならないこと、および、当該年度と翌年度の2年間、新たに取得した債券を満期保有目的の債券に分類することもできなくなる、という2点に留意が必要です。