在外子会社の換算レートと換算差額の処理【基準解説】

換算レート 会計基準の解説

海外に子会社を有する企業グループでは、子会社の会計処理はその国の現地通貨で記帳されることが一般的です。そのため、日本の親会社が当該企業グループの連結財務諸表を作成するに当たり、海外の子会社の決算数値を日本円に換算しなければなりません。

在外子会社から収集する決算情報には、貸借対照表・損益計算書・株主資本等変動計算書がありますが、それぞれに換算のルール(為替レート)が定められています。

なお、標準的な計算書類等の並びは「貸借対照表→損益計算書→株主資本等変動計算書」の順ですが、在外子会社の数値を換算する際は、「損益計算書→株主資本等変動計算書→貸借対照表」の順で換算すると処理が容易になります。
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損益計算書の換算

損益計算書の換算レートについては、以下のように定められています。

収益 期中平均レート

※決算時レートでも可

費用 期中平均レート

※決算時レートでも可

当期純利益 期中平均レート

※決算時レートでも可

親会社との取引 親会社が換算に用いるレート

上記の通り、収益・費用・当期純利益はいずれも期中平均レートまたは決算時レートで換算を行うことで共通しています。

一方、親会社と在外子会社の取引については、親会社が換算に用いるレートを使います。

その結果、期中平均レートと親会社が換算に用いるレートの差分だけ、在外子会社の現地通貨における損益計算書に計上されていない差額が生じます。この換算差額は、為替差損益として処理します。為替差損益は、通常、営業外収益または営業外費用の区分に計上します。

損益計算書の換算に係る留意点

現地通貨で表示された損益計算書を日本円に換算する際、当期純利益についても期中平均レート(または決算時レート)を用います。つまり、収益や費用を期中平均レート等で換算した後に、差額を当期純利益とする処理は誤りです。あくまで、収益・費用・利益のすべてを決められたレートで換算し、最終的に残る差額を為替差損益として計上します。

株主資本等変動計算書の換算

次に、株主資本等変動計算書の換算については、下記のとおりとなります。

親会社による株式取得時における資本項目 株式取得時のレート
親会社による株式取得後に発生した資本項目 発生時のレート

※利益剰余金等が典型例ですが、損益計算書の換算で記載した通り、当期純利益は期中平均レート(または決算時レート)で換算された額によって計上します。

親会社による株式取得後に実施された支払配当金 配当決議日のレート
親会社による株式取得後に発生した評価・換算差額等 決算時レート

貸借対照表の換算

最後に、貸借対照表の換算を以下の方法で実施します。

資産の部 決算時レート
負債の部 決算時レート
純資産の部 株主資本等変動計算書で換算した残高を計上

貸借対照表の換算を行うと、決算時レートと株主資本等変動計算書の換算で用いたレートとの間に差が生じ、その結果、貸借が一致しない状態となります。この一致しない額を処理する勘定科目が「為替換算調整勘定」となります。為替換算調整勘定は、貸借対照表の純資産の部に直接計上します。

貸借対照表の換算に係る留意点

現地通貨で表示された貸借対照表を換算すると、換算差額が生じ、この額を為替換算調整勘定に計上します。損益計算書の換算の際に生じる差額は為替差損益になりますが、こちらの貸借対照表の換算の際に生じるものは純資産の部に計上するという違いがあります。

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