不動産賃貸業を相続した場合に提出する書類と提出期限について

不動産 個人の税務と確定申告

相続によって不動産賃貸業を引き継ぐ場合、税務署に届出書を提出する必要があります。提出する書類は複数あり、それぞれに提出期限が定められています。

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相続人が提出する必要のある書類

相続人が提出する必要があるものとして、主に以下の書類があります。

  1. 準確定申告書(被相続人に係る分)
  2. 開業届
  3. 青色申告承認申請書
  4. 青色事業専従者給与に関する届出書
  5. 給与支払事務所等の開設等届出書
  6. 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書
  7. 消費税に関する届出書

準確定申告書(被相続人に係る分)

個人の所得は暦に従って計算しますので、被相続人がその年の1月1日から相続発生の日までに獲得した所得は「準確定申告」として税務署に申告・納税する必要があります。

申告・納税するのは相続人です。被相続人は亡くなっていますので相続人がかわりに申告・納税するという形です。

準確定申告書の提出期限は、相続があった日の翌日から4ヵ月以内です。

開業届

相続人は新たに不動産賃貸業を事業として開業することになりますので、開業届を提出します。

提出先は、自分(相続人)の住所地の管轄税務署です。

提出期限は事業開始後1ヵ月以内となりますが、遅れてしまっても受理されます。

青色申告承認申請書【重要】

不動産賃貸業に限らず、個人で事業を営むにあたっては青色申告をすることで税金の面で様々な優遇を受けることができます。

そのため、「青色申告承認申請書」を管轄税務署に提出します。

被相続人が青色申告をしていた場合でも、その効力はあくまで被相続人に係るものであり、自動で相続人に引き継がれることはありません。

青色申告承認申請書を提出しなかったり期限までに提出ができなかった場合、白色申告で確定申告を行わなければなりません。白色申告の場合、青色申告による税金面での優遇を受けることができませんので、税金が増えるといったデメリットが生じます。

青色申告承認申請書の提出期限

青色申告承認申請書については提出期限が定められており、これを過ぎると相続した最初の年は青色申告によって確定申告をすることができなくなってしまいます。

提出期限は、被相続人が青色申告だったかそうでなかったかによって異なり、まとめると以下のようになります。

被相続人が青色申告を行っていた場合

死亡日 青色申告承認申請書の提出期限
1月1日~8月31日 相続開始を知った日から4ヵ月以内
9月1日~10月31日 その年の12月31日
11月1日~12月31日 翌年の2月15日

被相続人が青色申告を行っていなかった(白色申告だった)場合

被相続人が青色申告を行っていなかった場合の提出期限
その年の3月15日、もしくは死亡日から2ヵ月以内のいずれか遅い日

 

相続税の申告期限は「相続開始を知った日から10ヵ月以内」ですので、青色申告承認申請書の提出期限はこれよりかなり短い期間となりますので注意が必要です。

青色事業専従者給与に関する届出書

個人事業主は、配偶者などを青色事業専従者にして給与を払うことができます。払った給与はその個人事業主の必要経費に算入することができます。

この場合、「青色事業専従者給与に関する届出書」を提出します。

給与支払事務所等の開設等届出書

相続人が事業をするにあたり青色事業専従者や従業員を雇って給与を支払う場合には「給与支払事務所等の開設等届出書」を提出します。

源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書

青色事業専従者や従業員に給与を支払う場合、「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」も提出しておいたほうがよいでしょう。

この申請書は、給与から源泉徴収(天引き)した所得税の納税を毎月ではなく年に2回に減らしてもらうための申請書です。

この申請書を提出しないと、給与を払ったら毎月(翌月10日までに)源泉徴収した税額を納付しなければならなくなり、事務処理が大幅に増えてしまいます。

「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」は給与を払う人数が常時10人未満の場合のみ、提出可能ですので、この要件に該当しない場合には納期の特例を受けることはできません。ただ、一般的に個人で(法人化せず)不動産賃貸業を行っている場合には常時10人以上に給与を払うというケースは少ないと思いますので、提出可能なケースが多いと想定されます。

消費税に関する届出書

消費税に関しては必要に応じて届出書を提出することになります。

消費税課税事業者選択届出書

相続人が自ら消費税の課税事業者となることを選択する場合には、「消費税課税事業者選択届出書」を提出します。被相続人が課税事業者を選択していたとしても、自動で相続人にその効力が引き継がれることはありません。

具体的には、被相続人が生前に大規模な建築を行うことに伴って消費税の還付を受けるべく課税選択をしていたようなケースでその建築物の完成前に亡くなった場合、相続人が免税事業者である場合にはそのままでは消費税の還付を受けることができません。相続人は改めて「消費税課税事業者選択届出書」を提出する必要があります。

消費税簡易課税制度選択届出書

簡易課税の適用を受けたい場合には「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出します。簡易課税が適用できるか否かについては、被相続人の課税売上高を考慮する必要はなく、相続人の基準期間の課税売上高のみで判定します。

消費税課税事業者届出書(基準期間用)

免税事業者または事業を営んでいなかった者が、基準期間の課税売上高が1,000万円を超える被相続人の事業を引き継いだ場合、その年(相続があった日の翌日~12月31日まで)は課税事業者となります。この場合には「消費税課税事業者届出書(基準期間用)」の提出が必要です。

適格請求書発行事業者の登録申請書

インボイス制度に関して、被相続人が適格請求書発行事業者であった場合(インボイスの登録事業者であった場合)であっても、登録の効力や登録番号が相続人に引き継がれることはありません。

ただし、事業を引き継いだ相続人はみなし登録期間中(※)は登録事業者とみなされる、という取り扱いがあります。この期間中は、被相続人の登録番号を使用することになります。

なお、みなし登録期間が経過した後も適格請求書を発行したい場合には、相続人は登録申請書を提出する必要があります。

※みなし登録期間・・・相続のあった日の翌日から次のいずれか早い日まで
・相続人がインボイス登録を受けた日の前日
・被相続人が死亡した日の翌日から4ヵ月

上記のみなし登録期間が存在するため、相続後、直ちにインボイスの交付ができなくなることはなく、最長4ヵ月の猶予があります。

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