非居住者等に対して源泉徴収の対象となる国内源泉所得の支払いをする場合、原則として源泉徴収を行い、翌月10日までに納付をする必要があります。
この点について、租税条約によって特典が付与されている場合があります。この特典を受けるためには特典を受ける者が所得の支払者を通じて所轄の税務署に「租税条約に関する届出書」を提出する必要があります。届出書の提出がない場合、仮に租税条約上に特典に関する定めが規定されていてもこの特典を享受することはできません。
租税条約に関する届出書の種類
租税条約に関する届出書は、所得の種類に応じて様式が定められています。様式は国税庁のホームページからダウンロードすることができます。
主なものとしては、
- 様式1:配当に対する所得税および復興特別所得税の軽減・免除
- 様式2:利子に対する所得税および復興特別所得税の軽減・免除
- 様式3:使用料に対する所得税および復興特別所得税の軽減・免除
などがあります。
租税条約に関する届出書の提出方法
届出書の提出方法のポイントは以下の3点です。
- 提出期限:対象となる所得の最初の支払日の前日まで
- 提出先:支払者(源泉徴収義務者)の所轄税務署
- 提出の流れ:所得の支払を受ける者が、所得の支払者を経由して提出する
なお、所得者から支払者への送付については、書面によるのではなく電磁的方法による提供も可能です(令和3年4月1日以降)。
支払者から所轄税務署への提出方法について
支払者(源泉徴収義務者)は、所定の要件を満たせば、所轄税務署長に対して書面による届出書等の提出に代えて、その届出書等をスキャナで読み取って作成したイメージデータ(PDF形式)などのデータをe-Taxで送信することができます。
特典の制限について
租税条約を締結している相手国によっては、その特典を不当に受けることがないよう、居住者についての判定を行う必要がある場合があります。この判定を行うため、租税条約に関する届出書に「特典条項に関する付表(様式17)」および「居住者証明書」を添付することが求められています。アメリカをはじめ、多くの租税条約においてこの特典条項が盛り込まれています。
特典制限条項に係る条項を適用するためには、原則として所得の支払の都度(※)、その支払日の前日までに所轄税務署へ届け出を行わなければなりません。※例外あり
居住者証明書の入手について
居住者証明書は各国の「権限ある当局」が発行する書類で、相手国において課税を受けるべきものとされる居住者であることを証明する書類を指します。
導管取引不適用の規定について
日米租税条約における特許権の使用料にように、所定の届け出を行うことで支払者においては免税となる定めがあります。ただし、その支払われた特許権の使用料を実質的に受益するのがアメリカの居住者でなく別の第三国の居住者であるようなケースでは、日米租税条約においては免税の特典を受けることができません。これを導管取引不適用の規定と言います。
租税条約に関する届出書が未提出だった場合の還付請求
租税条約に関する届出書が未提出である場合、そのままでは条約に定められた税率の軽減や免除の特典を享受することはできません。そのため、原則通り、支払者は支払いを行う際に源泉徴収を行う必要があります。
ただし、事後的に還付請求書に届出書等を添付して所得の支払者を通じて支払者の所轄税務署に提出することで還付を受けることは可能です。