【消費税】免税事業者から課税事業者になる場合の棚卸資産の調整仕訳

棚卸資産 法人経営の税務
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免税事業者から課税事業者になる場合の消費税

消費税は、事業年度ごとに納税義務の有無を判定することとされており、納税義務がない場合に「免税事業者」となり、納税義務がある場合には「課税事業者」となります。

免税事業者から課税事業者になる場合、免税事業者であった年度に仕入れた棚卸資産を課税事業者になってから販売するケースがあります。このときの仕入税額控除は、課税事業者になった年度に行うことができます。対象となる棚卸資産は、商品、製品、半製品、仕掛品、原材料、貯蔵中の消耗品等で所有しているものです。

棚卸資産に係る消費税額の調整をする理由

免税事業者であった期間に仕入れた棚卸資産は、その期間に販売されずに期末に在庫として残った場合、その翌期が課税事業者であれば当該期間に販売されるもの、と考えます。したがって、課税事業者として販売した際に消費税を預かるのに対して、免税事業者の期間に仕入れた棚卸資産の消費税の控除を認めないとなると、継続して課税事業者であるケースと比較してバランスが取れないためです。

棚卸資産の調整の仕訳例

免税事業者から課税事業者になる場合の調整方法を仕訳で示すと次のようになります。

【設例】
当社は卸売業を営んでいます。前年度は消費税の免税事業者でしたが、当年度から課税事業者になりました。前年度に仕入れた棚卸資産で前期末時点で貸借対照表に計上している額は、880,000円です。当年度にこの棚卸資産をすべて販売しました。売上金額は、1,100,000円(税込)です。

【仕訳例】

① 当年度の期首の仕訳

借方 金額 貸方 金額
期首商品たな卸高 880,000 棚卸資産 880,000
仮払消費税 80,000 仕入(注) 80,000

② 商品販売時の仕訳

借方 金額 貸方 金額
売掛金 1,100,000 売上 1,000,000
仮受消費税 100,000

仕訳例の解説

上記の仕訳は、あくまで一例です。特に、「① 当年度の期首の仕訳」は少し違和感があります。免税事業者から課税事業者に移行したタイミングでのイレギュラーな取り扱いであるため、一般的な仕訳とは異なる方法で仕訳を行わざるを得ないためです。

また、仮払消費税の相手科目の「仕入(注)」に関しては、他に適切な科目が無いため仕入勘定を用いていますが、例えば売上原価の内訳項目の中の「調整勘定」のようなものを利用して通常の仕入と明確に区分しておくことも考えられます。

仕訳を行った結果、損益計算書の売上高は1,000,000円、売上原価は800,000円(※)、利益は200,000円となります。また、消費税の計算においては、仮受消費税100,000円に対して、仮払消費税80,000円が認識されていることになります。

※ 期首商品たな卸高880,000円-仕入80,000円=800,000円

まとめ

免税事業者から課税事業者になる場合の棚卸資産の調整については、実務上それほど頻繁に論点になるわけではありませんが、該当した場合には、正しい消費税計算を行う観点で忘れずに処理する必要があります。

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