法人の解散と清算に係る税務申告の流れと留意点

法人の解散と清算 法人経営の税務

法人を解散・清算する場合の税務申告については、通常の申告とは異なる留意点があります。

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法人の解散・清算が行われる場合の税務申告の流れ

法人格を消滅させるためには、大きく分けて「解散」と「清算」の2ステップを踏む必要があります。

解散と清算に係る事業年度

まず、多くの会社は事業年度を1年間(12ヵ月)に設定していますが、解散によりその事業年度が区切られます。

法人が解散を行うと、その事業年度開始の日から解散した日までをひとつの事業年度として処理を行うことになります。この事業年度を、「解散事業年度」と言います。解散後は、その翌日から「清算事業年度」が開始します。さらに、清算事業年度中に残余財産の確定が行われた場合、その年度は「残余財産確定事業年度」となります。

確定申告書の提出期限

法人を解散する場合、まずは、解散事業年度の確定申告書を作成することになります。確定申告書の提出期限は、通常の場合と同じく、原則として(延長の特例を適用しない場合)、年度末の翌日から2ヵ月以内です。

次に、清算事業年度の確定申告書を、同様に年度末の翌日から2ヵ月以内に提出します。

解散事業年度・清算事業年度ともに、原則として事業年度末から2ヵ月以内が期限です。

清算事業年度において残余財産が確定したタイミングでは、その年度末から1ヵ月以内に残余財産確定事業年度に係る確定申告書を提出します。こちらは、申告期限の延長の特例は認められていません。

以上のように、法人の解散を決定すると、その後に最低でも2回は税務申告を行わなければならないことになります。さらに、解散の日から残余財産確定の日までが1年を超えるような場合には、その年数に応じて税務申告の回数も増えていきます。

税務申告に際しての留意点

解散と清算に関わる税務については、一部、通常の申告と異なる留意点があります。

解散事業年度の税務

解散事業年度の確定申告書の所得計算に関しては、基本的には通常の年度の税務処理と変わるところはなく、別表調整を行って所得を計算して作成します。その際、解散のタイミングが事業年度末日と異なる場合、その年度の月数が12ヵ月よりも短くなることがありますので、減価償却費の損金算入額や交際費の損金算入限度額の計算などに留意する必要があります。

例えば、3月末決算の会社(4月1日から3月31日を1事業年度と定めている会社)が、12月末日を解散日とした場合、解散事業年度は9ヵ月となりますので、各種の損金算入限度額が通常の年度よりも小さくなります。

また、解散事業年度に特徴的な点として挙げられる点が、欠損金の繰戻還付の処理です。通常は、中小企業者等を除いて欠損金の繰戻還付は適用できませんが、解散事業年度に関しては大企業も適用することが可能となっています。

清算事業年度の税務

清算事業年度については、一定の条件を満たした場合、期限切れ欠損金の損金算入が可能となっています。ここで言う一定の条件とは、残余財産がないと見込まれる場合(債務超過または純資産がゼロの場合等)です。欠損金の繰戻還付については、解散事業年度と同様に大企業も適用可能です。

残余財産確定事業年度の税務

最後に行う申告が、残余財産確定事業年度に係る確定申告です。期限切れ欠損金の損金算入ができる点とその要件は、清算事業年度と同じです。また、欠損金の繰戻還付も、清算事業年度と同様に適用されます。

一方、残余財産確定事業年度に特徴的なのが、事業税の取り扱いです。事業税は、会社にとっての最後の申告である残余財産確定事業年度における税金計算上、損金の額に算入することができます。これは、ここで損金に算入しておかないと、永久に損金に算入するタイミングがなくなってしまうことから認められている処理です。

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