減価償却方法を変更した場合の取り扱い
固定資産の減価償却方法は会計方針に該当します。
通常、会計方針の変更を行った場合には、過年度に遡及してその会計方針を適用する処理を行います。
一方、減価償却方法自体は会計方針とされているものの、その変更は「会計方針の変更を会計上の見積りの変更と区別することが困難な場合」に該当する、とされています。そのため、減価償却方法を変更した際には、会計上の見積りの変更と同様に取り扱うこととされています。すなわち、会計上の見積りの変更時の処理と同じく、過年度への遡及適用は行いません。
企業会計基準第24号の規定
企業会計基準第24号「会計方針の開示、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」の規定は以下のとおりです。
19項 会計方針の変更を会計上の見積りの変更と区別することが困難な場合については、会計上の見積りの変更と同様に取り扱い、遡及適用は行わない。ただし、注記については、第11項(1)、(2)及び前項(2)に関する記載を行う。
20項 有形固定資産等の減価償却方法及び無形固定資産の償却方法は、会計方針に該当するが、その変更については前項により取り扱う。
引用:企業会計基準委員会ホームページ
減価償却方法の変更には正当な理由が必要
企業がいったん採用した減価償却方法は、無条件に変更が認められるものではありません。変更するには、会計基準等の変更に伴うものでない限り、「変更するための正当な理由」が必要になります。
公開されている決算書において、当該「正当な理由」の具体的な記載として以下のような注記例があります(引用:EDINET)。
減価償却方法の変更理由の注記例
この変更は、東京本部ビルの取得及び松井田工場の建設等を契機に、減価償却方法を見直した結果、建物は、収益や設備の稼動状況に左右されず、長期的・安定的に使用され、利用による便益が平均的に発現するものと考えられるため、定額法による減価償却方法を採用する方が会社の経済的実態をより適切に反映させることができると判断したためであります。
この変更により、従来と比べて、当事業年度の減価償却費が減少し、営業利益、経常利益及び税引前当期純利益がそれぞれ353百万円増加しております。
これは当社においては、生産体制の再編による設備投資が一巡し今後の投資が安定的に推移することが見込まれること、主力製品である醤油の生産量が近年の取り組みにより安定化し、今後の設備稼働も安定的に推移すると予想されること、また、上記設備投資と需要予測が、当事業年度よりスタートすることとなった新中期計画の前提でもありこれを契機として固定資産の減価償却方法について見直した結果、定額法を採用することがより相応しいと考え、これを変更することとなったものであります。
この結果、従来の方法によった場合にくらべ、当事業年度の減価償却費は138,262千円減少し、営業利益は135,702千円、経常利益及び税引前当期純利益はそれぞれ138,262千円増加しております。
前事業年度において、5つの提供サービスを1つに統合し、複数プロダクトを使用しやすい新プランを導入したことにより、ストック収入が増大し、当社が提供するサービス領域の需要は長期安定的に推移しております。
このような状況を受けて、人員採用計画・設備計画を変更したことを契機に有形固定資産の償却方法について再度検討を行ったところ、当社が保有する有形固定資産は、ストック収入の安定化によって、耐用年数期間において平準的に使用され均等な消耗が見込まれることから、今後は減価償却費を耐用年数期間にわたり均等に費用配分することがより適切であると判断し、定額法に変更したものであります。
この変更により、従来の方法に比べて、当事業年度の営業利益、経常利益及び税引前当期純利益がそれぞれ20,437千円増加しております。
この変更は、オークラ東京の竣工を契機に減価償却方法を再検討したところ、定率法により減価償却を行っていた資産の主な内容は、ホテル建物付属設備、客室備品などの長期的、安定的に使用する資産であり、オークラ東京の固定資産についても、長期的、安定的に使用することが見込まれることから、定額法による減価償却の方法がより合理的であるという判断によるものであります。
この結果、従来の方法と比べ、当事業年度の減価償却費は1,364百万円減少し、営業損失及び経常損失はそれぞれ1,364百万円減少し、税引前当期純利益は1,364百万円増加しております。
従来、当社は、有形固定資産の減価償却方法として、建物(建物附属設備を除く)並びに2016年4月1日以降に取得した建物附属設備及び構築物以外の有形固定資産(リース資産を除く)については定率法を採用していましたが、当事業年度より定額法に変更しております。
当社では、近年の当社をとりまく市場環境の変化を受けた中期的な経営方針のひとつとして、製造拠点の再構築など既存事業の収益基盤強化に向けた事業推進体制の見直しを実施しております。
当該見直しを遂行するなかで、今後は、各ビジネスセグメントの市場環境の変化に合わせた最適かつ効率的な生産体制を構築することにより、長期にわたる安定的な生産設備の稼働が見込まれることから、設備コストを毎期均等に負担させる定額法とすることが適切であると判断しました。
この結果、従来の方法と比べて、当事業年度の営業利益は5,957百万円、経常利益及び税引前当期純利益はそれぞれ5,970百万円増加しております。
この変更は店舗設備の標準化が完了し、資産の有効活用ができる環境が整ったことを契機に店舗設備等の資産の利用状況を調査した結果、工具器具備品等における急激な劣化はみられず、かつ、長期安定的な利用が見込まれるようになったため使用期間にわたり費用を均等に配分する方法を採用することが会社の経済的実態をより適切に反映する合理的な方法であると判断したことによるものです。
これにより、従来の方法に比べて、当事業年度の営業利益、経常利益及び税引前当期純利益はそれぞれ379百万円増加しております。
有形固定資産の減価償却方法については、従来、定額法を採用していたが、当事業年度より、建物、建物附属設備及び構築物の一部を除き定率法に変更している。
この変更は、当社が新日鐵住金株式会社の連結子会社となったことに伴い会計処理の統一を図るとともに、今後、新日鐵住金グループにおいて推進する事業構造改革による同種設備間での最適な生産配分等により設備の生産性が向上していくことを踏まえた変更である。
この変更により、従来の方法に比べて、当事業年度の減価償却費が3,748百万円増加し、営業利益、経常利益及び税引前当期純利益はそれぞれ3,156百万円減少している。
注記の記載事項
上記の注記例にも記載されている通り、減価償却方法を変更した際には、注記表において「変更の内容・正当な理由・影響額」を記載することになります。