【退職給付】過去勤務費用と数理計算上の差異の違い

退職給付 会計基準の解説
スポンサーリンク

過去勤務費用とは

過去勤務費用とは、退職給付水準の改訂等に伴って生じた退職給付債務の増加または減少部分です。

過去勤務費用は、退職給付制度を新しく導入した場合や、退職給付制度を改訂した際に発生します。一方、いわゆる給与のベースアップは過去勤務費用の発生原因にはなりません。

制度の改訂等が過去勤務費用の発生原因ですので、毎年発生し続けるということはほとんど無いと言えます。

かつての名称は過去勤務債務

過去勤務費用は、かつて過去勤務「債務」という名称でした。会計基準の改訂によって、名称が「債務」から「費用」に変更になっていますが、意味する内容に変更はありません。

数理計算上の差異とは

数理計算上の差異とは、年金資産の期待運用収益と実際の運用収益の差異や、退職給付債務の計算に用いた見積りと実績の差異のほか、見積り項目自体の変更などによって発生するものです。

退職給付に係る負債の見積り項目の例

退職給付に係る負債を計算するためには、退職給付債務や年金資産の額がベースになりますが、それぞれの額を算出する際に以下のような見積り項目が存在します。

  • 割引率
  • 予想昇給率
  • 退職率
  • 死亡率
  • 長期期待運用収益率

これらをそれぞれ予測して計算に用いますので、実績が出た時に予測値と比較してズレが生じることが自然と言えます。

過去勤務費用と数理計算上の差異の違い

過去勤務費用と数理計算上の差異のそれぞれの定義は上記の通りですが、両者の違いをまとめると以下のようになります。

発生原因

過去勤務費用と数理計算上の差異は発生原因によって以下のように区分されます。

過去勤務費用 数理計算上の差異
  • 給付水準の引き上げ
  • 給付水準の引き下げ 等
  • 割引率等の変更
  • 期待運用収益と実際の運用成績の乖離 等

発生頻度

一般的に、発生頻度については以下のような違いがあります。

過去勤務費用 数理計算上の差異
  • 制度改訂等に起因するため、一般的に、毎期発生するものではない
  • 予測と実績は通常一致しないため、毎期発生することが普通

会計処理

過去勤務費用も数理計算上の差異も、どちらも発生後に費用処理を行うことは共通しています。

個別財務諸表においては、当期に発生した過去勤務費用・数理計算上の差異のうち、当期に費用処理された部分については退職給付費用として損益計算に含めます。

また、連結財務諸表においては、未認識過去勤務費用・未認識数理計算上の差異は、その他の包括利益で認識したうえでその他の包括利益累計額(純資産の部の項目)に計上します。さらに、その他の包括利益累計額に計上されている未認識過去勤務費用・未認識数理計算上の差異のうち当期に費用処理された部分に関しては、組替調整を行います。

費用処理方法

過去勤務費用・数理計算上の差異ともに、費用に計上する方法として定額法(原則)と定率法(容認)があり、どちらかを選択できますが、いったん採用した方法をみだりに変更することは出来ません。

費用処理年数

過去勤務費用・数理計算上の差異ともに、発生年度に費用処理する方法、または平均残存勤務期間以内の一定の年数で按分する方法で費用処理を行いますが、両者の性質の違いから以下のように若干の違いがあります。

過去勤務費用 数理計算上の差異
  • 退職金規程等の改訂による過去勤務費用は頻繁に発生するものではないため、発生年度別に一定の年数にわたって定額法による費用処理を行うことが望ましい
  • 左記のような規定はない

なお、過去勤務費用と数理計算上の差異は、本質的に異なるものですので、費用処理方法や費用処理年数を両者で統一する必要はありません。

費用処理開始のタイミング

費用処理を開始するタイミングは原則として発生年度ですが、数理計算上の差異に限り翌年度からとすることも可能です。

過去勤務費用 数理計算上の差異
  • 右記のような規定はない
  • 差異の発生年度の翌年度から費用処理を開始してもよい
タイトルとURLをコピーしました