【消費税】課税売上割合が著しく変動する具体例

著しく変動 法人経営の税務

消費税の仕入税額控除は、基本的に仕入を行った課税期間において控除します。しかし、固定資産等はその仕入れた時の課税売上割合のみをもって計算を完結させることが不適当な場合があります。そのため、課税売上割合が著しく変動した場合は、調整が必要となるケースがあります。

スポンサーリンク

課税売上割合が著しく変動したときの調整

消費税の仕入税額控除について調整が必要となるのは、下記に当てはまる場合です。

  • 課税事業者が①調整対象固定資産の課税仕入れ等に係る消費税額について②比例配分法により計算した場合
  • その計算に用いた③課税売上割合が、④第3年度の課税期間における⑤通算課税売上割合と比較して⑥著しく増加したときまたは著しく減少したとき
  • 調整対象固定資産を第3年度の課税期間の末日に保有している場合

①調整対象固定資産

調整対象固定資産とは、棚卸資産以外の資産で、建物およびその附属設備、構築物、機械および装置、船舶、航空機、車両および運搬具、工具、器具および備品、鉱業権その他の資産で、一の取引単位の価額(税抜金額)が100万円以上のものを指します。

土地は調整対象固定資産には該当しません。

②比例配分法

比例配分法とは、下記のどちらかに該当するケースです。

  • 個別対応方式において課税資産の譲渡等とその他の資産に共通して要するものについて、課税売上割合を乗じて仕入控除税額を計算する方法
  • 一括比例配分方式により仕入控除税額を計算する方法

なお、課税期間中の課税売上高が5億円以下、かつ、課税売上割合が95パーセント以上の場合は全額控除できますが、当該ケースも比例配分法に含まれます。

③課税売上割合

課税売上割合は次の計算式で算定します。

課税売上割合=課税売上高(税抜)/総売上高(税抜)

分母の総売上高には、課税売上高、輸出免税売上高、非課税売上高が含まれます。したがって、分母にしか算入しない非課税売上高が多額の場合、例えば土地の売却を行ったケースや不動産賃貸収入(住宅の貸付けによる収入)が多額に発生した場合などは、課税売上高が小さく計算される結果となります。

④第3年度の課税期間

第3年度の課税期間とは、仕入れ等を行った課税期間の開始の日から3年を経過する日の属する課税期間を指します。

⑤通算課税売上割合

通算課税売上割合とは、仕入課税期間から第3年度の課税期間までの各課税期間中の総売上高に占める課税売上高の割合と定義されています。つまり、事業年度が1年間(12ヵ月)の標準的な会社の場合、3年分の課税売上高等を用いて計算します。

通算課税期間
第1年度 第2年度 第3年度
仕入れた年度 調整する年度

⑥著しく増加したときまたは著しく減少したとき

「著しく増加したときまたは著しく減少したとき」に当たるかどうかは、変動差と変動率の両方から検討し、両方とも満たす場合に「著しい増加または著しい減少」に該当します。

  • 変動差:通算課税売上割合と仕入時の課税売上割合の「差」が5%以上
  • 変動率:通算課税売上割合と仕入時の課税売上割合の「増減率」が50%以上

著しく変動する具体例(著しい減少に該当する例)

課税売上割合が著しく変動する具体例として、以下のようなケースが考えられます。

通算課税期間
第1年度 第2年度 第3年度
仕入れた年度 調整する年度
課税売上高 8,000 課税売上高 2,000 課税売上高 1,500
総売上高 10,000 総売上高 8,000 総売上高 15,000
課税売上割合 80% 課税売上割合 25% 課税売上割合 10%

上記の例では、第1年度の課税売上割合は80%(=8,000/10,000)でしたが、第2年度以降に急激に減少し、第3年度には10%(=1,500/15,000)となった例です。この場合、通算課税売上割合は34.8…%(=(8,000+2,000+1,500)/(10,000+8,000+15,000))となります。

ここから変動差と変動率を計算すると、下記のようになります。

  • 変動差:80%-34.8…%=45.2…%
  • 変動率:45.2…%/80%=56.4…%

変動差は5%以上で、かつ変動率も50%以上となっていることから、著しい変動(著しい減少)に該当します。

通算課税売上割合が著しく増加した場合

通算課税売上割合が仕入課税期間の課税売上割合に対して著しく増加した場合には、下記の加算金額を第3年度の課税期間の仕入控除税額に加算します。結果的に、納付税額はその分だけ少なくなります。

加算金額=調整対象基準金額×通算課税売上割合 - 調整対象基準金額×仕入時の課税売上割合

通算課税売上割合が著しく減少した場合

通算課税売上割合が仕入課税期間の課税売上割合に対して著しく減少した場合には、下記の減算金額を第3年度の課税期間の仕入控除税額から控除します。結果的に、納付税額はその分だけ多くなります。

減算金額=調整対象基準金額×仕入時の課税売上割合 - 調整対象基準金額×通算課税売上割合
タイトルとURLをコピーしました