賃貸物件に内装工事を行った際の耐用年数
建物を賃借し、その物件に内装工事を行った場合の耐用年数については、以下の定めがあります。
■他人の建物に対する造作の耐用年数
法人が建物を賃借し自己の用に供するため造作した場合(現に使用している用途を他の用途に変えるために造作した場合を含む。)の造作に要した金額は、当該造作が、建物についてされたときは、当該建物の耐用年数、その造作の種類、用途、使用材質等を勘案して、合理的に見積った耐用年数により、建物附属設備についてされたときは、建物附属設備の耐用年数により償却する。ただし、当該建物について賃借期間の定めがあるもの(賃借期間の更新のできないものに限る。)で、かつ、有益費の請求又は買取請求をすることができないものについては、当該賃借期間を耐用年数として償却することができる。
(耐用年数の適用等に関する取扱通達 1-1-3)
上記の通り、更新不可の賃借期間の定めがあり、かつ、有益費の請求または買取請求をすることができない場合については、賃借期間をそのまま耐用年数とすることが認められますが、そうでない場合には、建物は合理的に見積もった年数とし、建物附属設備についてはそれぞれの建物附属設備の耐用年数を使うことになります。
ここで、賃貸人との契約において「更新不可の賃借期間の定めがあり、かつ、有益費の請求または買取請求をすることができない」ケースはそれほど多くないものと考えられます。
したがって、実務において多いケースとしては、まず建物と建物附属設備を区分したうえで、建物については耐用年数を合理的に見積もるという作業が必要になります。
| 建物 | ▶ | 合理的に見積もる |
| 建物附属設備 | ▶ | 建物附属設備の耐用年数を使う |
建物の耐用年数を見積もる方法
建物について内装工事を行った場合には、耐用年数を合理的に見積もる必要がありますが、そのためにはまず工事業者から工事の内訳を入手する必要があります。
工事契約を締結する場合には見積書を入手することが一般的ですので、通常はその見積書に工事の内訳と金額が記載されています。
追加工事や設計変更があった場合は当該変更に関する見積書や請求書も用いながら内訳を把握します。
工事ごとの内訳と金額が把握できたら、耐用年数表等を参考に各内訳ごとの耐用年数を算出し、全体を加重平均する等の方法で建物について実施された内装工事に関する全体の耐用年数を見積もるといった方法が考えられます。
なお、この見積もり方法はあくまで一例であり、より精緻な見積もりが可能となるような他の方法がある場合や、上記を参考に算定したうえで実態に即した年数への調整を行うこともあります。
いずれにしても、年数を見積もった際の根拠を残しておくことが重要となります。
建物附属設備の種類と耐用年数
建物附属設備については上記の建物の場合と異なり、年数を見積もる作業は行わず、各建物附属設備について定められた耐用年数を使用します。
下表は建物附属設備の耐用年数の一覧です。
| 構造・用途 | 細目 | 耐用年数 |
| 電気設備(照明設備を含む) | 蓄電池電源設備 | 6年 |
| その他のもの | 15年 | |
| 給排水又は衛生設備及びガス設備 | 15年 | |
| 冷房、暖房、通風又はボイラー設備 | 冷暖房設備 | 13年 |
| その他のもの | 15年 | |
| 昇降機設備 | エレベーター | 17年 |
| エスカレーター | 15年 | |
| 消火、排煙又は災害報知設備及び格納式避難設備 | 8年 | |
| エヤーカーテン又はドアー自動開閉設備 | 12年 | |
| アーケード又は日よけ設備 | 主として金属製のもの | 15年 |
| その他のもの | 8年 | |
| 店用簡易装備 | 3年 | |
| 可動間仕切り | 簡易なもの | 3年 |
| その他のもの | 15年 | |
| 前掲のもの以外のもの及び前掲の区分によらないもの | 主として金属製のもの | 18年 |
| その他のもの | 10年 |

